2つの時計
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2つの時計

デッキタイム(Deck Time)

― 社長の暴走と、最初の「タスク」
多摩時計末期、
社内で「これは普通じゃない」と最初に囁かれたのがデッキタイムだった。
甲板上での使用を前提とし、
時刻よりも分の把握を最優先
外周主役の表示
視線移動を極力減らすレイアウト
という、当時としては極端な思想で設計された。
社長は当初、
「秒針はいらない」
「動いてるかどうかは感覚で分かる」
と主張し、
秒針を完全に排した設計を推し進めようとした。
これに対しブレインは、
動作確認ができない
クレームリスクが高い
下請けとして通せない
と強く反対。
最終的に、
センタースモールセコンドという
極めて特殊な妥協案が採用される。
社員の間ではこの仕様を指して、
「社長の言い分と、
現実がぶつかった結果」
と語られるようになった。
後年、
この時計を起点として
社内で「タスク」という言葉が使われ始める。

GTタイム(GT Time)

― 理想を機能にしようとした失敗作(そして成功)
GTタイムは、
デッキタイム以上に社長の介入度が高かったモデルである。
開発初期、社長は大胆な提案を行った。
「ムーブメント表記は、
印刷じゃなくて“機能”にしよう」
具体的には、
ムーブメント名を
実際に回転するドラム表示として組み込み
視覚的にも機能的にも
時計の状態を示す構想だった。
ブレインは即座に却下する。
コストが合わない
構造が複雑すぎる
下請けの立場では不可能
最終的に採用されたのは、
ドラムを模した静的表示
あくまで視覚的な演出に留めた構成
という、妥協案だった。
社内ではこの経緯を指して、
「GTタイムは、
できなかった理想の痕跡」
と語られている。

共通する評価(社内視点)

売れる時計ではない
分かりやすい時計でもない
だが新富士時計(当時は多摩時計)が
何を考えているかは一番分かる
この2本について、
社長は後年こう語ったとされる。
「あれは普通だよ。
条件が違っただけだ」

位置づけ(後年)

デッキタイム
→ タスク思想の発火点
GTタイム
→ 理想を現実に落とす難しさの記録
どちらも、
シリーズ化されない
特別扱いされない
だが忘れられない
という、新富士時計らしい立場に置かれている。

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